sikikazuto
日記❺
2025年3月2日
日常を脅かされて初めてやる気がみなぎる性分なので、あまりセーフティネットを張りすぎるのもいまいちだなと大人になってようやく気付いた。落ちるからこそ鉄骨渡りはオモロい。
就活の時はとにかく年収の良さと残業の少なさしか頭になくて、壮大な椅子取りゲームに躍起になっていたもんだから安定志向が良いことばかりだと信じて疑わなかった。お金と権力を持ってるだけのつまらない大人というのは大企業にも山ほどいて、こうはなりたくないなと入社早々に思ったのを今でも覚えてる。地位や肩書きにしがみつく以外の生き方を知らないまま死ぬのはたぶん勿体無い。

学生の時分、生きるって前向きに死に向かって走り続けることなんじゃね?とか授業中に考えてるようなやつだった。中島らもは薬物依存とアルコール中毒になりながら最後まで自殺だけはしなかったらしいけれど、自分のような失敗嫌いはこの生き方にふと憧れを感じてしまう。まあしませんけど。怖いし。
タバコを吸う勇気もない自分は、そんな破滅的な作家の作ったものを読むことで自らの衝動のはけ口にしてきた節があるので、不道徳な内容というだけで創作物を糾弾する流れを見ると辟易する。自身の持つ攻撃性からは目をそらして自分は清廉潔白ですよ、と装う人の浅ましさ。映画や漫画はその激情を健全に逃がしてくれる一助となってくれるんだけど、どうやら無謬な人間にはそれがわからないらしい。

いつからかSNSを努めて見ないようにしたので投稿する時にちらっと覗く程度になった。下から上に通り過ぎてく一人一人には本物の感情や思惑がぎゅうぎゅうに詰まっていて、膨大な情報量に目が回るので上にスッと飛ばしてスマホを閉じる。
自分の正しさを信じて疑わない人間というのはどこにでもいて、お互いのその信念を草相撲みたいに絡め合って引っ張り合い、ちぎれた方が負け的な信念バトルが今ネットで人気を博してるっぽい。負けたら悪者になるので結構緊迫感のある良ゲーらしい。
SNS上で名指しして取り囲んで批判することがどうしても得策だとは思えなくて、たとえ相手が世紀の大悪党であっても憎しみをぶつける気が起きない。黒ひげ危機一発みたいにナイフをひとりひと刺しずつ順繰り回していった結果、最後のひと刺しだけが罪に問われてそれ以外の人は明るみには出ないけれど、刺した感触は確実にその手に残り続ける。自分の手を汚してまで消したい相手がいるのはある種溌剌とした人生なのかもしれないけど、自分、平和主義者なものでして、そんな平和じゃない方は近づいてきたら全員ぶっ飛ばそうと思います。

白線の内側にさえいればハッピーというわけでもないことに薄々気づき始めてからは、やること全てがいい感じに適当になった。
ファミレスを享受せよ、で16桁のパスワードを前にしたラーゼは数十万年かけて総当たりでこじ開けたわけだけど、そんなさっぱりとした愚直さがほしい。
命綱を推しのアクキーみたいにジャラジャラぶら下げてもキモいので、もっと身軽でありたい。
もし仮に大学時代に戻れたとして安定を手放す選択ができるのかというと怪しいけれど、安定と挑戦の中間にある自分にとってちょうどいい選択肢をきっと探っていくのだと思う。
なんかやる気がみなぎってきたので作業に戻る。



(余談、黒ひげ危機一発は本来のルールだと最後の人が勝ちらしい。囚われた仲間のロープをナイフで解いて救出する、という光のゲーム。)